この前、国立新美術館(六本木)で企画展「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」を観てきた。クリスマスまでやっていて、なんと無料。どうなっているんだ…。検索してもらえたら会場や作品の雰囲気は分かるかなと思う。ものすごく巨大な、主にモノクロのインスタレーションが展示されていた。会場の天井がいつもより高く、そして広いなあとびっくり。この展示は多分3時間半ほど観たと思う。たまたま日展という大規模な公募展も会期中でそっちも観ていたらあっという間に閉館時間になっていた。昼から夜まで、ずっと作品の側にいた。国立新美術館はガラス張りの美術館なので空の色によって館内の雰囲気が大きく変わる。夕方ごろからは、展示室を移動するたびに窓の向こうの景色とこちら側の空気の色のようなものが変わっていて「もうこんなに暗い」とひとりごとばかりだった。
そんな冬の国立新美術館で観た「大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ」で、一番心惹かれた作品は、《Liminal Air Space—Time 真空のゆらぎ》というインスタレーションだった。布、空気を送るファン、ゆるやかに向きを変えるライト。展示空間は24×41×8mで横長のイメージ。調べてみてほしい。動画とか写真とかちらほら上がっていると思う。まるで人工光の一切が排除された、完全な夜の海だった。不思議に仄白く光る夜の海。作品からちょっと離れた正面の壁際には長めのベンチが置かれていて、それは砂浜のようだった。そこに座った。
ベンチに座ってそのまま正面を見ると、静かに鳴り続ける何かの音が聞こえ、不規則にふわふわと揺れ、ふくらみ、しぼみ、照らされるポリエステルの布が視界いっぱいに広がる。波だ、と思った。決して足元を濡らしたりしない、脅威のない、波だ。どうしてだろう、とても魅力的に思えて、2時間くらいそこに座っていた。どうやってあの波を表現しているのか気になって、周期的なファンと光の動きを組み合わせて可能な限りランダムに近い状態で布の動きを作っているのか?と考えたりしたものの、動きがあまりにも有機的だったのでよく分からない。まあ、分からなくていいかと思った。
私は生きているとき「全部を知りたい、何もかも知りたい」と無知に強く怯えている。それなのに不思議と、美術作品を観ているときに鍵ってはそう思わない。知らなくてもいい、答えがなくてもいい、と体の力が抜ける。その代わり「憶えていたい」と思う。日常生活においては「知りたい、憶えたいわけじゃないけど」のスタンスなので真逆だ、新しい発見。
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